「父が亡くなり相続手続きを進めようとしたら、長年音信不通の兄が相続人に含まれていた」
「戸籍を調べたら前妻の子が相続人だとわかったが、どこにいるか見当もつかない」
相続手続きを進める中で、こうした問題に直面するケースは珍しくありません。
遺産分割協議は、相続人全員が参加しなければ成立しません。一人でも行方不明の相続人がいると、不動産の名義変更も、預金口座の解約も、相続税の申告も、すべてがストップしてしまいます。
弁護士や司法書士に相談すると「戸籍の附票で住所を調べてみましょう」と言われることが多いですが、住所がわかっても実際にはそこに住んでいない、手紙を送っても返事がない、というケースも少なくありません。
そこで有効な選択肢のひとつが、探偵(調査事務所)への依頼です。この記事では、相続人が行方不明になった場合の対応方法と、探偵を活用するタイミング・調査の流れについて解説します。
相続人が行方不明だと遺産分割協議が止まる理由

遺産分割協議とは、亡くなった方(被相続人)の財産をどのように分けるかを相続人全員で話し合い、合意する手続きです。民法上、この協議は相続人全員が参加しなければ有効に成立しません。一部の相続人を除外して進めた遺産分割協議は、法的に無効となります。
たとえ「その人には連絡がつかない」「何十年も会っていない」という事情があっても、相続人としての権利は消えません。相続人全員の署名・押印がそろわなければ、遺産分割協議書は完成しないのです。
不動産 名義変更ができない 相続登記には相続人全員の印鑑証明書が必要。2024年4月より登記が義務化され、放置すると過料の対象になる可能性がある。 | 預貯金 解約・払い戻しができない 金融機関での手続きも全員合意が原則。口座が凍結されたまま放置されるリスクがある。 | 相続税 申告期限は10か月 相続開始を知った日から10か月以内。未分割のまま申告も可能だが、余分な手間・費用がかかる。 |
自分でできる相続人の探し方

まず試みるべきは、戸籍の附票の取得です。戸籍の附票とは、戸籍に記録されている人の住所の履歴が記載された書類で、現在の住民票上の住所を確認できます。
直系の親族であれば本人申請で取得できますが、傍系(兄弟・甥姪など)の場合は取得できる範囲が限られるため、弁護士・司法書士・行政書士などの資格者に職務上請求として取得してもらう方法が現実的です。
戸籍の附票で住所が判明したら、その住所に手紙を送って連絡を試みます。それと並行して、共通の親族に連絡先を知らないか聞いてみることも有効です。
また、行方不明者がSNS(Facebook・X・Instagramなど)を利用している場合、フルネームや旧居住地などから特定できることがあります。費用をかけずに試せる方法として、一度確認してみる価値はあります。
ただし、こうした方法にも限界があります。戸籍の附票で住所がわかっても、実際にはその住所に住んでいないケースは珍しくありません。長年行方不明の人は、住民票を異動させずに別の場所に暮らしていることもあります。手紙を送っても「宛先不明」で返ってくる、受け取り拒否される、という事態も起こり得ます。
こうした「住所はわかるが、本人がそこにいない」という状況になったとき、次のステップとして探偵への依頼が選択肢に上がります。
自力で見つからないときに探偵を使う理由

弁護士や司法書士は、相続手続きの法的サポートや書類作成を得意としています。戸籍の収集・整理、不在者財産管理人の申立て、遺産分割協議書の作成といった業務は彼らの専門領域です。
一方で、現地に赴いて人を探すという行為は、法律家の本業ではありません。「どこかにいるはずだが、どこにいるかわからない」人を実際に見つけ出すのは、調査のプロである探偵が得意とする分野です。
探偵が作成する調査報告書は、単に「見つかりました」という報告書ではありません。現地の状況、調査の経緯、確認された事実を客観的に記録した書面であり、不在者財産管理人の選任申立ての際に「不在の事実を証明する資料」として活用できます。
家庭裁判所への申立てには、「その人物が住民票上の住所に居住しておらず、帰来する見込みがない」ことを示す疎明資料が必要です。探偵の報告書はその証拠として機能します。弁護士と探偵が連携することで、調査から法的手続きまでをスムーズにつなぐことができます。
探偵による相続人調査の流れ
まずは電話・LINE・メールなどで相談を行います。現時点でわかっている情報(最後に連絡が取れた時期、氏名・生年月日・最後の住所など)を整理しておくと、相談がスムーズに進みます。
調査の可否や難易度は、手がかりの量によって大きく変わります。信頼できる事務所は、初回相談の時点で「調査できる可能性」と「できない場合の理由」を正直に伝えてくれます。
ヒアリング内容をもとに、調査方針と費用の見積もりが提示されます。「何をどこまで調べるか」「何日間・何人体制で動くか」を明確にしてもらいましょう。
契約前に費用の上限や追加料金の条件を必ず確認することが重要です。
調査員が現地に赴き、張り込み・聞き込みなどを通じて対象者の所在を追います。調査の進捗は随時報告を受けられる事務所が安心です。
所在が特定された場合、依頼者に代わって状況を説明し、協力を求める接触サポートを行う事務所もあります。面識のない相続人への最初の接触を第三者が担うことで、話し合いがスムーズになるケースも少なくありません。
調査結果は報告書としてまとめられます。所在が特定できた場合はその情報と経緯、特定できなかった場合は調査の記録と不在の状況が記載されます。
この報告書を弁護士・司法書士に引き渡すことで、その後の法的手続きへとつなぐことができます。
費用の目安と依頼前に確認すること

相続人調査(人探し調査)の費用は、調査の難易度・期間・調査員の人数によって異なりますが、15万円〜80万円が一般的な相場です。
手がかりが豊富で調査期間が短く済む場合は費用を抑えられますが、長期間・広範囲の調査が必要なケースでは費用が高くなります。複数の事務所に見積もりを取って比較することをお勧めします。
探偵業法に基づく届出を行っている事務所かどうかは、必ず確認してください。
相続人が見つかった後の手続き
所在が判明し、連絡が取れた場合は、遺産分割協議への参加を求めます。長年疎遠だった相続人への最初の連絡は、内容や言葉遣いに注意が必要です。いきなり「署名してほしい」という内容の文書を送るのは関係をこじらせる原因になります。まずは相続が発生した事実と、協力をお願いしたい旨を丁寧に伝えることが大切です。
所在は特定できたものの連絡が取れない、あるいは所在が特定できなかった場合は、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てる方法があります。
不在者財産管理人とは、行方不明者に代わってその財産を管理し、家庭裁判所の許可を得て遺産分割協議に参加できる人物のことです。申立てから選任までにおよそ1〜2か月かかります。
行方不明になってから7年以上が経過し、生死すら不明な場合は、家庭裁判所に失踪宣告を申し立てることができます。失踪宣告が認められると、その人物は法律上「死亡したもの」とみなされ、行方不明者を除いた形で遺産分割協議を進めることが可能になります。
ただし確定まで6か月〜1年ほどかかるため、相続税の申告期限との兼ね合いには注意が必要です。
こんな場合は特殊な調査が必要

相続人が行方不明になっているケースの中でも、状況によっては通常の人探し調査とは異なるアプローチが求められることがあります。
前妻の子・認知した子が相続人になっているケースでは、そもそも相続人の存在を最近知ったという場合が多く、名前や生年月日しかわからない状態からの調査になることもあります。こうしたケースへの対応については別記事で詳しく解説しています。
相続人が海外に出ているケースでは、国内の調査手法が通じないため、海外調査の経験がある事務所への依頼が不可欠です。海外に出た相続人を探す方法については別記事をご参照ください。
よくある質問
原則として依頼した方(相続人の一人)が負担します。ただし、調査によって相続手続きが進んだ場合、その費用を遺産から差し引くことができるかどうかは、弁護士に相談のうえ判断することをお勧めします。
探偵の調査報告書は、裁判所への申立て書類における疎明資料として使用できます。ただし、それ自体が「証拠」として裁判で使えるかどうかは内容や取得方法によります。詳しくは弁護士にご確認ください。
手がかりの量や調査の難易度によって大きく異なります。早ければ数日、難しいケースでは数週間〜数か月かかることもあります。初回相談の際に、事務所から大まかな見通しを聞いておくとよいでしょう。
警察の捜索願は、犯罪や事故に巻き込まれた可能性がある場合に受理されるもので、相続手続きのために相続人の所在を調べるという目的では、積極的な調査は期待しにくい状況です。民事上の目的での人探しは、探偵への依頼が現実的な手段です。
まとめ
相続人が行方不明の場合、遺産分割協議は法律上、その人抜きで進めることができません。自分でできることから始めつつ、住所がわかっても本人がいない・連絡が取れないという状況になったとき、探偵への依頼は有効な一手です。
探偵が得意とするのは「実際に現地で人を探す」こと。弁護士・司法書士の法的サポートと組み合わせることで、調査から手続き完了まで着実に進めることができます。
行方不明の相続人をお探しの場合は、まずお気軽にご相談ください。調査の可否・費用・進め方について、無料でご説明します。
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