M&Aにおける企業調査の重要性

M&A(合併・買収)は、事業拡大や後継者問題の解決など、経営上の大きな選択肢のひとつです。しかし、相手企業についての情報が不十分なまま契約を進めてしまうと、取引後に重大な問題が発覚し、多大な損失を被るケースも少なくありません。

「思っていた会社と違った」「隠れた負債があった」「経営陣に問題があった」——こうしたM&A後のトラブルを防ぐために欠かせないのが、事前の企業調査です。

M&Aにおける企業調査とは、買収・合併する相手企業の実態を多角的に確認するプロセスのことを指します。財務状況や法的リスクはもちろん、経営陣の素性や社内体制、取引先との関係など、表面上の情報だけでは見えない部分まで調べることが重要です。

M&Aで企業調査が必要な理由

M&Aの交渉は、相手企業が提示する資料や説明をもとに進められることがほとんどです。しかし、提示される情報はあくまで相手が開示したいものに限られており、意図的であるかどうかにかかわらず、重要な情報が隠れていることがあります。

企業調査を怠った場合に起こりうるリスクとして、以下のようなものが挙げられます。

財務リスク 財務上の隠れた負債や不正会計の発覚
人物リスク 代表者・役員の素行や信用問題による企業価値の毀損
反社リスク 反社会的勢力との関係が後に判明し、取引先や金融機関との関係が悪化
法的リスク 訴訟リスク・知的財産問題など法的トラブルの引き継ぎ
労務リスク 従業員の離職・内部問題による買収後の事業停滞

こうしたリスクをM&A前に把握し、判断材料として活用するために、企業調査は必要不可欠なプロセスといえます。

M&A前に行う企業調査の主な種類

1
デューデリジェンス(DD)
財務・法務・税務・ビジネスの各側面から相手企業を精査する手法。弁護士や公認会計士が関与することが一般的です。
相手企業が開示した資料をもとにする調査のため、「開示されていない情報」の確認には限界があります。
2
信用調査
取引先や金融機関との信用力を調べる調査。与信管理の観点から、支払い能力や取引実績、業界内での評判などを確認します。
信用調査機関に依頼するケースが多いですが、得られる情報は限定的なこともあります。
3
人物調査・素行調査
代表者・役員の人物像や素行を確認する調査。経歴詐称・過去のトラブル・金銭問題・反社会的勢力との関係など、M&Aの判断に直結する情報を調べます。
公開情報だけでは把握が難しく、専門の調査機関でなければ確認できない場合がほとんどです。
4
企業実態調査(フィールド調査)
帳簿上の情報と実際の事業実態が一致しているかを確認する調査。事業所の実在確認・従業員の就業状況・取引先との関係など、現地や聞き込みを通じて実態を把握します。
非上場企業・中小企業のM&Aでは、現場レベルの調査が特に重要になります。

特に注意が必要な調査ポイント

経営者・役員の人物調査
買収後に経営体制を維持する場合、既存の役員との関係が続くケースもあります。過去に問題を起こしていないか、業界内での評判はどうか、個人的な信用情報に問題はないか——こうした点を事前に確認しておくことが、M&A後のリスクを大きく低減します。
反社会的勢力との関係確認
企業が反社会的勢力と何らかの関係を持っていた場合、買収後に自社もそのリスクを引き継ぐことになります。反社チェックは法的コンプライアンスの観点からも必須の確認事項です。
従業員・労務問題
表面上は問題がなくても、内部に深刻な労務問題を抱えている企業も少なくありません。未払い残業、ハラスメント問題、主要人材の流出リスクなど、買収後の事業継続に影響しうる要素は事前に把握しておく必要があります。
取引先・業界内の評判
帳簿上の売上や顧客数だけでなく、実際の取引先との関係性、業界内での評判も重要な確認事項です。主要取引先が離反リスクを抱えていないか、業界内での信頼性はどうかといった点も、M&Aの判断に大きく関わります。

デューデリジェンスだけでは不十分な理由

弁護士・会計士によるデューデリジェンスは、M&Aに欠かせないプロセスですが、調査できる範囲には限界があります。

相手企業が意図的に情報を隠していた場合、または公式の書類に記録されていない問題(素行、人間関係、非公式な取引など)については、デューデリジェンスで把握することは困難です。

こうした「公開情報の外側にある情報」を調べるためには、独自の情報収集力と調査ノウハウを持つ専門機関への依頼が有効です。探偵・調査機関は、人物調査・企業実態調査・フィールド調査において、公式の調査では見えにくい情報を収集することを得意としています。

まとめ|M&A前の企業調査は「複合的なアプローチ」が重要

M&Aの成否は、事前にどれだけ相手企業の実態を把握できるかにかかっています。財務・法務のデューデリジェンスはもちろん、人物調査・企業実態調査・反社チェックなど、複数のアプローチを組み合わせることで、リスクを最小化した意思決定が可能になります。

「提示された資料を信じるしかない」「相手の話が本当かどうか確認できない」——そうした不安を抱えたまま大きな経営判断を下すことは、企業にとって大きなリスクです。

M&Aの検討段階から、専門家への相談を積極的に活用することをおすすめします。

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